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共学校と別学校のメリット&デメリット

2025.02.18

基本情報

イギリスのボーディングスクールにまつわる今回のテーマは、「共学校と別学校のメリット」についてです。これはイギリスのボーディングスクール留学を考えているご家庭の中では永遠のテーマです。

ここではイギリスの団体が発表しているデータやイギリスを代表する女子ボーディングスクールと男子ボーディングスクールのアドミッションの方にもインタビューを重ね、それぞれのメリットについてまとめました。留学校を選ぶ時に参考にしていただければと思います。

 


女生徒が笑顔で写真撮影する様子です

イギリス留学を考る際に重要になるポイントはいくつもありますが、男女共学(Co-ed School)と男女別学(Single Sex School) のどちらが良いのかは、多くのご家族が気にする重要な点です。

イギリスの私立校の団体である「Independent School Council」の2023度版のレポートを見ると、全英にある共学校数は1,100校、男子校数は92校、女子校数は139校となっています。全体の約17%が男女別学校となっており、共学校が主流。ここ数十年にわたって、イギリスでは別学校が共学化する傾向が強くなっていますが、伝統的な男子名門校の共学化は大きなニュースとなりました。

 

名門男子ボーディングスクールの共学化の流れ

2022年には約640年という長い歴史を誇る「ウィンチェスター・カレッジ」がシックス・フォームから女子生徒を受け入れました。2023年から歴史上初めてとなる女性校長を迎えています。また過去数十年にわたって、シックス・フォームのみ女子生徒の入学を許可していた「ウェストミンスター・スクール」は、2030年までに全学年で女子生徒を受け入れる計画を発表。伝統的な男子校と知られる「チャーターハウス・スクール」は、2021年から全学年を通じて共学となり、ブリティッシュ・ボーディングスクール・フェアの参加校でもある「アビンドン・スクール」は来年の秋、創立1256年以来、初めての女子生徒を迎えます。

このようにフルボーディングの男子校が、通学生を受け入れたり、一部で女子を迎えたりと時代に合わせて変化をしています。現在イギリスの伝統的な全寮制(通学生を受け入れていない、全校生徒がフル・ボーディングスクール)男子校はイートン・カレッジ、ハーロウスクール、ラドリー・カレッジの3校となっています。

ラドリーカレッジは2025年3月15日の「ブリティッシュ・ボーディングスクール・フェア」の来日校となります。

 

ラドリー・カレッジ

Radley College

共学校のメリット

さて、共学が良いのか、別学が良いのか?という話題になると、どちらのタイプの教育を支持する人もとても情熱的で強い主張をもっています。

共学を支持する保護者の中には、共学は21世紀を生き抜くための準備になると主張します。学校を卒業した後、大学も職場も男女混合なのだから、学校もそうあるべきではないか。男女共学は男女の固定観念を取り払う。互いに切磋琢磨することで、双方に良い影響を与え合い、生徒たちは大人になってからも役立つ社会的スキルを学ぶことができると信じています。

 

実験中の写真です

 

 

女子校のメリットは静かに学べる環境と理数科目の履修率

女子校を支持する人たちは、女子が勉強に集中できるような、静かな学習環境に注目します。一般的に小中学生の同学年の男女を比べると、精神年齢は女子のほうが圧倒的に高く、男子はうるさくて落ち着きがない存在。男子なんていないほうがいい、というお年頃の女子のコメントもよく聞きます。

実際にGirls’ Schools Association(女子校協会)は、女子校に在籍する女子の履修科目と学業成績に関するユニークなデータを発表しています。

「女子校に在籍する女子」と「共学校に在籍する女子」のAレベルにける数学およびサイエンスの科目履修割合と達成度のデータを簡単にまとめると、

– 女子校に在籍する女子は、共学校に在籍する女子に比べ、「数学」と「物理」の履修率が2.5倍高い。

– その他のサイエンスの履修率も高く、女子校における生物学の履修率は40%、化学は77%、コンピューター・サイエンスは72%である

つまり、女子校に通う女子生徒のほうが、STEM科目を学ぶ傾向が強いという事実が明かされます。これは「女子はこうあらねばならない」という固定概念が女子校のほうが弱いと言うこともできます。女子の科目、男子の科目といった無意味なプレッシャーを感じることなく、女子校の女子は好きな科目を学ぶことができるというのです。

 

「女子校に在籍する女子」と「共学校に在籍する女子」のAレベルにける数学およびサイエンスの科目履修割合と達成度のデータ

出典:GSA

また、Key Stage 4、Key Stage 5ともに、平均して「女子校に在籍する女子」が「共学校に在籍する女子」より成績が良いというデータもあります。女子と男子では成長の速度が違うということはよく言われており、女子は女子のみの環境にいたほうが、同じスピードで成長する仲間に囲まれて、居心地が良く、効率的に学ぶことができるのかもしれません。

女子校のデメリットをどう考えるか?

一方で女子校のデメリット「多様性が足りない」という意見に関しては、学校側はどのように感じているでしょうか? BBSFJ 2024に参加したチェルトナム・レディス・カレッジ(通称CLC)の入試審査部の部長、Mr. Houchinはこのように意見を述べています。

「CLCは女子校で、生徒間のジェンダーの多様性は確かにありません。しかし学校全体は多様性に富んだ外向きのコミュニティを形成しています。約40カ国以上の国籍の生徒が在籍し、多様で幅広い教育の旅を体験しているからです」。

このように女子校であっても、国籍、教科、課外活動などで多様性に満ち溢れた環境を生徒に提供することができれば、ジェンダーの多様性など些細な問題になってしまうのかもしれません。

 

アドビントンスクールの合奏の様子です

写真提供:アビンドン・スクール

 

進化する男子校の指針とは?

一方で男子校は「男子のみの環境」のメリットを大きく主張していません。BBSFJ 2024に参加した15校の中で、唯一の男子校だったAbingdon Schoolで長らくアドミッションを担当してきた、Mrs.Jorgensenさんにお話を聞きました。

「男子校を選ぶ理由の一つは施設でしょう。男子のみの環境ですから、男子が好んで取り組むスポーツ施設、例えばラグビーピッチや、男子が興味をもつような課外活動に環境は整っています。しかし、私たちは男子校に通うメリットとして、女性から隔てられた「男子の世界」を強調することはありません。むしろ、ジェンダーに関しては時代の流れに沿って柔軟に対応していることをアピールしたいと考えます。学校内の責任のある職員には多くの女性が就いていますし、入学してから女子生徒と多くの活動を共にします。フランス語やスペイン語のような海外語学研修では女子生徒と交流し、シックス・フォームのカリキュラムでは女子校と共同で授業を行います。良い男子校であることの条件の一つは、女子生徒との適切な交流にあるのではないでしょうか」。

また、ブリティッシュ・ボーディングスクール・フェア March 2025に参加する男子校、ラドリー・カレッジシャーボーン・スクールは女子校と共同で行うプログラムに力を入れていることで、よく知られています。

 

 

男子校と共学を経験したベン・ヒューズの体験談

チェルトナムカレッジの外観です

写真提供:チェルトナム・カレッジ

私自身のボーディングスクールでの経験はユニークでした。13歳から15歳(9年生と11年生)の間、私の学校は男子校でした。最初の3年間は男子に囲まれ、スポーツや競争が盛んなハードな男子の世界に身を投じて過ごしました。「タフ」と表現するにふさわしい、そんな世界です。

ところが16歳になった時に、シックスフォーム(12年生と13年生、Aレベルの年)が男女共学校となりました。女子が加わった最後の2年間は、学校の環境が一変。学内の「力学」も変化しましたが、それは間違いなく良い方向だったと感じています。私は女子生徒の隣で学びながら、社会性を身につけることができました。

私は幸運にも、別学・共学、両方のタイプの教育を経験し、両方のメリットを享受することができたました。では、実体験を通して、どちらが良いと言えるのでしょうか?

これは、お子さんやご家族の好みにもよるもので、正解も不正解もありません。絶対に女子校が良いと思って実際に学校を見てみたけど、いまいちピンとこないケースもありますし、共学のつもりで学校訪問をしたものの男子校の魅力に取り憑かれたご家庭のケースもあります。

多くのボーディングスクールを知る私からのアドバイスは、実際に学校を見てみること。できれば、共学、別学両方の学校をバランスよく見学すると、それぞれの利点を比較しやすいかと思います。実際に学校に足を運び、教室や寮をその目で見るのと、ホームページだけで見るのには、大きな違いがあります。実際に学校に通うお子さまの意見が最も重要です。どこの学校が「居心地がよい」と感じるのか、双方の学校を比較検討しないと正確な答えはでないと言えるでしょう。

ベン・ヒューズ


ピッパズ・ガーディアンズでは、イギリスのボーディングスクールを定期的に訪問し、在校生や学校関係者とコミュニケーションをする中から共有される最新の正しい情報をベースに、お子さまにとって「最良」の学校探しをお手伝いしています。イギリスの教育や受験を熟知したイギリス人のプロフェッショナルによるアドバイスです。ご家族に対するフレンドリーな姿勢とプロセス、価格ともに公正で透明性のあるサービスがご好評をいただいています。より詳しい情報をご希望の方は、こちらからお問い合わせください。日本語で対応させていただきます。